この記事でわかること
- 日本のB帯ワイヤレスマイク(806.125MHz〜809.750MHz)がタイで使用禁止である具体的な理由(DTRS用途への周波数割当)
- 違反した場合の罰則内容(5年以下の懲役・10万バーツ以下の罰金・または両方の併科)
- 2021年4月施行のNBTC新規則で許可された周波数帯(694〜703MHz・748〜758MHz・2.4GHz帯)
- タイ国内で合法的にワイヤレスマイクを使用するための具体的な手段(現地レンタル・対応周波数機材の購入)
- 撮影許可・ドローン規制・政府認可コーディネーターなど、タイ撮影時に必要な関連規制の概要
タイで撮影やイベントを行う際、日本から持参したワイヤレスマイクをそのまま使用してしまうケースが後を絶ちません。結論を先にお伝えすると、日本で一般的に使われているB帯(806.125MHz〜809.750MHz)のワイヤレスマイクは、タイでの使用が法律で禁止されており、違反した場合は懲役・罰金という刑事罰の対象となります。本記事では、なぜ禁止なのか、どんな罰則があるのか、そしてタイで合法的にワイヤレスマイクを使うための具体的な方法を、公的根拠とともに徹底解説します。
B帯(806.125MHz〜809.750MHz)が禁止される理由
日本の業務用ワイヤレスマイクの多くは、B帯と呼ばれる800MHz帯域(具体的には806.125MHz〜809.750MHz)を使用しています。PanasonicのWX-4300BやSONYのUWP-Dシリーズなど、日本国内では認可された機器であっても、タイ国内では使用できません。
その根本的な理由は、タイではこの周波数帯がまったく別の用途にすでに割り当てられているからです。日本では放送・音響用に開放されているこの帯域が、タイでは無線通信インフラとして利用されており、日本のマイクを使用すると既存の通信システムに干渉するリスクがあります。
タイの周波数割当の実態(806-814MHzはDTRS用途に割当済み)
タイでは、806MHz〜814MHz(および対となる851MHz〜859MHz)の帯域が、DTRS(Digital Trunked Radio Systems/デジタル基盤無線)として正式に割り当てられています。DTRSとは、警察・消防・救急などの公共安全機関や、大規模な業務用途で使われるデジタル無線システムです。
つまり、日本のB帯ワイヤレスマイク(806.125MHz〜809.750MHz)を使用すると、タイの重要な公共通信インフラと周波数が干渉する可能性があり、これが使用禁止の技術的・社会的理由となっています。隣接するチャンネル間の間隔は25kHzと定められており、タイの周波数管理は厳密に運用されています。
NBTC(国家放送通信委員会)の公的根拠資料
この規制の根拠は、タイの電波・放送行政を所管するNBTC(National Broadcasting and Telecommunications Commission/国家放送通信委員会)が公開している公的文書に明記されています。NBTCの周波数管理に関する資料(E-book「กฎระเบียบเกี่ยวกับการบริหารคลื่นความถี่」)の182ページ目に、上記の周波数割当の詳細が記載されています。
同文書の該当箇所(日本語訳):
「この無線周波数計画は、地上移動サービスのTrunked Radioシステム用に周波数チャンネルの割り当て、周波数ペアのグループ分け、および周波数の使用条件を定めるものです。周波数帯は806-814メガヘルツ(MHz)および851-859メガヘルツ(MHz)をカバーしており、隣接するチャンネル間の間隔は25kHzとされています。」
タイ語で書かれている文書ですが、数字の部分を確認いただくだけでも、該当帯域の割当状況をご理解いただけます。
放送通信法(仏歴2498年/西暦1955年)第6条・第23条の内容
タイでの無線機器の使用は、仏歴2498年(西暦1955年)制定の放送通信法によって厳しく規制されています。特に重要なのが第6条および第23条で、これらの条文は、タイ国内で許可されていない周波数帯の無線機器を使用することを明確に禁止しています。
第6条は無線通信機器の使用に関する許可制度を定め、第23条は無許可の無線機器使用に対する罰則規定を設けています。これらの条文は日本の電波法に相当するもので、国内向け(日本の技適)の認可は、当然ながらタイ国内では一切効力を持ちません。
「5年以下の懲役」「10万バーツ以下の罰金」またはその両方
上記の法律に違反した場合の罰則は非常に重く、具体的には以下の通りです。
- 懲役:5年以下
- 罰金:10万バーツ以下(2025年レート参考で日本円で約42万円相当)
- またはその両方(懲役+罰金の併科)
これは「うっかり使ってしまった」という過失であっても適用され得る規定です。日本では合法的に販売・使用されている機器であることは、タイ国内では一切の免責事由になりません。企業の撮影クルーがロケで使用した場合も、個人のYouTuberが取材で使用した場合も、同様に罰則の対象となりえます。
実際に取り締まりを受けるケース・リスク
取り締まりが行われるリスクが特に高い状況としては、以下のケースが考えられます。
- タイ政府機関や軍施設、警察施設の近辺での撮影(DTRSの通信への干渉が検知されやすい)
- 大規模なイベント・展示会・コンサートでの使用(多数の無線機器が使用される環境では電波環境の監視が強化される)
- テレビ局や放送局が絡む商業撮影(NBTCとの接点がある現場では発覚リスクが上がる)
- タイ政府認可コーディネーターを介さない外国メディアの撮影
現状ではすべての使用事例が即座に取り締まられているわけではありませんが、法律上は明確に違反であり、刑事罰のリスクを負ったまま撮影を続けることは、企業・個人いずれにとっても非常に危険です。
NBTCへの事前申請が必要
日本のワイヤレスマイクのタイへの物理的な持ち込み自体は可能ですが、タイ国内で使用するためにはNBTCへの事前申請が必要です。申請なしにタイ国内で使用した時点で、前述の罰則対象となります。
申請方法・必要書類・所要期間の詳細については、NBTC(国家放送通信委員会)の公式窓口へ直接お問い合わせいただくことを強く推奨します。申請書類はタイ語での作成が求められるケースが多く、タイ語に不慣れな方は現地の法務・通関の専門家やタイ政府認可の撮影コーディネーターに相談することが現実的です。
2021年4月施行の新規則の概要
NBTC(国家放送通信委員会)の2020年の発表により、2021年4月からワイヤレスマイクに関する新しい規則が施行されました。この規則改正の主な内容は以下の通りです。
- 従来のワイヤレスマイクのUHF帯(794MHz〜806MHz)は、新たに803MHz〜806MHzへの移行が求められた
- 新たに許可されるワイヤレスマイクのUHF帯は、694MHz〜703MHzおよび748MHz〜758MHzとなった
この規則改正により、2021年以前にタイで使用されていた一部のマイクも、周波数帯の変更が求められることになりました。2021年以降、タイ国内で合法的に使用できるワイヤレスマイクは、上記の新しい周波数帯に対応した機器に限定されています。
なお、2021年施行の規則以降にさらなる改正が行われていないかどうかについては、NBTCの公式サイト(nbtc.go.th)で最新情報を確認することを推奨します。本記事の情報は2025年時点のものに基づいていますが、電波法規制は随時改正される可能性があります。
申請の流れと問い合わせ先
事前申請を検討する場合の大まかな流れは以下の通りです。
- 持ち込む機器の型番・周波数・出力などのスペックを整理する
- NBTCの窓口に申請書類を提出する(タイ語での申請が基本)
- 許可証の発行を受けてから、タイ国内での使用を開始する
ただし、短期の撮影ロケや商業案件の場合、事前申請の手続きよりも、後述のタイ現地でのレンタルを利用するほうが現実的かつ確実です。
タイ国内でのレンタルサービスを利用する
タイで合法的にワイヤレスマイクを使用するための、最も現実的かつ確実な手段がタイ現地でのレンタルサービスの利用です。タイ国内の周波数規制に適合した機材を保有している会社から借りることで、法的リスクをゼロにした状態で撮影・イベントを実施できます。
Dayzero Bangkok Co., Ltd.では、タイで使用可能なワイヤレスマイクをはじめ、幅広い撮影機材のレンタルを提供しています。バンコクを拠点に日本語対応でサービスを展開しており、タイでの撮影案件に慣れたスタッフが対応します。ワイヤレスマイクの使用が必要な撮影・イベントの際はぜひご相談ください。
また、オフィス片山(OFFICE KATAYAMA CO., LTD.)は、タイ政府観光スポーツ省認可の撮影コーディネーターであり、タイ郵政省(NBTC管轄)への登録を完了した合法ワイヤレスマイクを自社で保有しています。保有機材の登録ブランドはSONY製・AZDEN製・RODE製で、認証番号は01-2024-00370(2024年更新)です。外国メディアや企業の大規模な撮影案件では、こうした政府認可コーディネーターを通じて機材を手配することが、法的コンプライアンスの観点から最も安全です。
| 会社名 | 特徴 | 対応機材ブランド | 備考 |
|---|---|---|---|
| Dayzero Bangkok Co., Ltd. | 日本語対応・バンコク拠点のレンタル会社 | お問い合わせにて確認 | 撮影機材全般のレンタルに対応 |
| オフィス片山(OFFICE KATAYAMA CO., LTD.) | タイ政府観光スポーツ省認可コーディネーター/NBTC登録済み合法マイク保有 | SONY、AZDEN、RODE | 認証番号:01-2024-00370(2024年更新) |
タイで使用可能な周波数帯のマイクを購入する
日本出発前に、タイで合法的に使用できる周波数帯に対応したワイヤレスマイクを購入するという選択肢もあります。
タイで許可されている主な周波数帯は以下の通りです。
- 694MHz〜703MHz(2021年新規則による)
- 748MHz〜758MHz(2021年新規則による)
- 2.4GHz帯(デジタルワイヤレス方式)
特に近年普及が進んでいる2.4GHz帯のデジタルワイヤレスマイクは、Wi-FiやBluetoothと同じ周波数帯を使用するため、多くの国で追加の許可なく使用できる傾向にあります。代表的な製品としては、Hollyland Lark MAXやRØDE Wireless GO IIなどが挙げられます。ただし、2.4GHz帯であっても、タイ国内で使用する前にNBTCの規制に適合しているかを個別に確認することを推奨します。
一方、B帯(800MHz帯)の代表的な日本製品であるPanasonic WX-4300BやSONY UWP-Dシリーズは、タイでは使用できません。これらをタイに持ち込んで使用することは法律違反となります。
| 周波数帯 | タイでの使用可否 | 代表的な製品例 | 備考 |
|---|---|---|---|
| B帯(806.125MHz〜809.750MHz) | ❌ 使用禁止 | Panasonic WX-4300B、SONY UWP-Dシリーズ | DTRSと干渉するため厳禁 |
| UHF帯(694MHz〜703MHz) | ✅ 使用可(新規則) | 新規則対応機材 | 2021年4月以降の新基準 |
| UHF帯(748MHz〜758MHz) | ✅ 使用可(新規則) | 新規則対応機材 | 2021年4月以降の新基準 |
| 2.4GHz帯(デジタルワイヤレス) | ✅ 概ね使用可 | Hollyland Lark MAX、RØDE Wireless GO II | 使用前にNBTCへの個別確認を推奨 |
カルネ(ATA CARNET)を活用した機材持ち込みの選択肢
プロの撮影クルーや企業が一時的に高価な機材をタイに持ち込む場合、ATA CARNET(カルネ)と呼ばれる国際的な通関書類を活用する方法があります。カルネは、機材を一時的に外国に持ち込む際に関税・消費税の支払いを免除する国際的な保証制度で、「機材専用のパスポート」とも呼ばれます。
ただし、カルネはあくまで通関上の手続きを簡略化するものであり、タイ国内での無線機器使用許可とは別の問題です。カルネを使って機材をタイに持ち込んでも、NBTCの規制に違反する周波数帯のワイヤレスマイクをタイ国内で使用することは、依然として放送通信法違反となります。カルネの活用は、通関と税務の観点での選択肢であって、電波法規制への対応策にはならない点に注意が必要です。
ドローン規制(CAAT・NBTCへの登録義務)
タイでの映像制作においては、ワイヤレスマイクの規制に加えて、ドローン(UAV)に関する規制も非常に厳しく定められています。ドローンの飛行には、CAAT(タイ民間航空局:Civil Aviation Authority of Thailand)への機体登録と飛行許可取得が義務付けられており、無許可での飛行は犯罪となります。
また、ドローンのコントローラーが使用する無線周波数(2.4GHz帯・5.8GHz帯など)についても、NBTCの管轄となります。タイでドローン撮影を行う場合は、CAATとNBTCの両機関への対応が必要です。
海外メディア撮影にはタイ政府認可コーディネーターが必要
外国のメディア・企業がタイ国内でロケ撮影を行う場合、タイ国家映画映像委員会(TFO:Thailand Film Office)が定めるルールのもと、タイ政府認可を受けた撮影コーディネーターを介することが求められるケースがあります。認可コーディネーターは、撮影許可の取得から機材の合法的な手配まで、包括的なサポートを提供します。前述のオフィス片山はこの認可を受けた会社の一つです。
撮影許可申請の義務(タイ政府観光スポーツ省)
タイの寺院・国立公園・政府施設・特定の公共空間での商業撮影には、タイ政府観光スポーツ省(Ministry of Tourism and Sports)への撮影許可申請が必要です。許可なしに商業目的で撮影を行うことは規制対象となります。タイでの撮影に関わる許可申請の全体像については、タイで撮影時に必要な許可証関連についてわかりやすく解説もご参照ください。
A帯のワイヤレスマイクもタイで使えない?
A帯は主に470MHz〜806MHz前後の帯域を指しますが、タイの規制は周波数帯ごとに異なります。B帯(806.125MHz〜809.750MHz)は明確に禁止されていますが、A帯のすべての周波数がタイで禁止されているわけではありません。ただし、タイ国内で使用できる周波数帯は2021年の新規則(694MHz〜703MHz、748MHz〜758MHz)に基づいて定められており、日本向けのA帯機器がそのままタイで使用できるとは限りません。持参する機器の正確な周波数をメーカーのスペックシートで確認し、NBTCの規定と照らし合わせることが不可欠です。
有線マイクなら問題ない?
有線マイク(XLRケーブル接続等)は無線電波を使用しないため、今回の放送通信法による規制の対象外です。タイでの撮影において法的リスクをゼロにしたい場合、有線マイクを使用することは最もシンプルかつ確実な解決策の一つです。インタビュー撮影やスタジオ収録など、有線接続が物理的に可能な状況であれば、有線マイクの使用を積極的に検討してください。
ワイヤレスイヤモニ(IEM)も規制対象?
ワイヤレスイヤモニター(In-Ear Monitor)も無線電波を使用するため、使用する周波数帯によっては同様の規制対象となりえます。コンサート・ライブイベント・放送収録などで業務用のIEMシステムを使用する場合は、その機器が使用する周波数帯がタイの規制に適合しているかを事前に確認する必要があります。特にB帯(800MHz帯)を使用するIEMシステムは、ワイヤレスマイクと同様にタイでの使用は禁止です。
個人のYouTube撮影でも罰則を受ける?
はい、個人のYouTuberやビデオグラファーであっても、タイの放送通信法は等しく適用されます。「趣味の撮影だから」「小規模なコンテンツだから」という理由は、法律上の免責理由にはなりません。仏歴2498年(西暦1955年)放送通信法第6条・第23条に基づく罰則(5年以下の懲役または10万バーツ以下の罰金、もしくはその両方)は、プロの撮影クルーに限らず、個人の使用にも適用される可能性があります。タイでvlogや取材動画を撮影するYouTuberの方も、使用するワイヤレスマイクの周波数をあらかじめ確認しておくことを強く推奨します。
タイでの撮影・イベントにワイヤレスマイクを使用する予定がある方は、以下のチェックリストを渡航前に必ず確認してください。
【タイ渡航前のワイヤレスマイク確認チェックリスト】
- [ ] 持参するワイヤレスマイクの使用周波数帯を機器のスペックシートで確認した
- [ ] 使用周波数がB帯(806.125MHz〜809.750MHz)に該当しないことを確認した
- [ ] 使用周波数がタイの新規則(694〜703MHz、748〜758MHz、または2.4GHz帯)に適合していることを確認した
- [ ] B帯機器をタイに持ち込む場合、タイ国内での使用はせず輸送中のみとすることを確認した
- [ ] タイ現地でのレンタルサービス(Dayzero Bangkok、オフィス片山等)を利用する手配を完了した
- [ ] 有線マイクを代替手段として準備した(可能な場合)
- [ ] ドローンを使用する場合、CAATへの登録・飛行許可を取得した
- [ ] 商業撮影の場合、撮影場所に応じた撮影許可をタイ政府観光スポーツ省等に申請した
- [ ] 外国メディア撮影の場合、タイ政府認可コーディネーターを手配した
タイでの撮影機材レンタルに関するお問い合わせは、弊社Dayzero Bangkok Co., Ltd.までお気軽にご連絡ください。日本人担当スタッフが対応いたします。

タイで現地採用としてIT企業での営業・WEBマーケティングを数年担当。WEBマーケティングで得た経験や知識を活かしYouTubeを2017年に立ち上げ、翌年2018年にWeb広告代理店事業を設立。SEO対策、動画制作、SNSマーケティングなど幅広くWebマーケティング事業を展開。現在代表を勤める。
