この記事でわかること(読了時間:約10分)
- タイではお酒の写真があるだけで一律に違法になるわけではないが、ブランド訴求、飲酒の誘引、商業目的、報酬関係が重要な判断要素になる
- 企業・インフルエンサーの宣伝的投稿は特にリスクが高く、2025年改正法と最新の告示を含めた確認が必要
- 2008年法第43条には最大50万バーツの罰金・懲役1年などの上限が定められているが、適用条文は行為ごとに異なる
- 2026年5月29日以降、一般の酒類販売時間は原則11時〜24時、購入・飲酒年齢は20歳以上
- 旅行者・在住者・企業・インフルエンサー別に、投稿前に確認すべきポイントを解説
2015年に大きな話題となったタイでのアルコール飲料の広告事件。タイの3ビッグブランドの1つBeer Changがステルスマーケティング手法を使い、有名人やインフルエンサーがSNSにビールのロゴ入り画像・動画を投稿したことで社会問題化しました。
この問題は過去の話ではありません。2020年には一般市民のFacebook投稿が摘発され、2025年11月には改正法が施行されました。ただし、お酒の写真が写っているだけで一律に違法になるわけではありません。投稿目的、表現、ブランドの見せ方、飲酒の誘引、報酬・広告関係を含めて判断されます。
タイでSNS発信を行う企業・個人インフルエンサー・旅行者を問わず、この記事を読んで正確なルールを把握してください。
タイのSNS環境の全体像については、以下の記事も参考にしてください。
タイのアルコール規制法とは(第32条・第43条)

法律の正式名称と2025年改正
タイの酒類規制の基本法は「仏暦2551年酒類管理法(Alcoholic Beverage Control Act B.E. 2551)」で、2008年に制定されました。その後、酒類管理法(第2号)B.E. 2568(2025年)が2025年9月9日に官報掲載され、同年11月8日に施行されています。SNS投稿を判断するときは、2008年法だけでなく改正法と最新の告示をあわせて確認する必要があります。
第32条とSNS投稿の考え方
第32条は酒類広告や、飲酒を直接・間接に勧める表現を規制しています。タイ保健省疾病管理局(DDC)の解説では、ブランド名や容器が写っていることだけで一律に違法と決まるわけではなく、称賛・飲酒の誘引、商業目的、報酬関係など投稿全体の文脈が重要です。
| 投稿の要素 | リスクの見方 |
|---|---|
| 商品名・ロゴ・容器が明確に見える | それだけで自動的に違法とは限らないが、ほかの要素と組み合わさると判断材料になる |
| 「おすすめ」「飲んでみて」などの表現 | 購入・飲酒を誘引する表現としてリスクが高い |
| 企業から報酬や商品の提供を受けた投稿 | 商業目的・広告性が明確になりやすく、特に慎重な確認が必要 |
| 著名人・インフルエンサーを使ったブランド訴求 | 2025年改正法で追加された規制も含め、実施前に専門家確認が必要 |
罰則(2008年法第43条)
2008年法第43条に定められた上限
| 罰則の種類 | 内容 |
|---|---|
| 罰金(上限) | 50万バーツ |
| 懲役(上限) | 1年 |
| 違反継続に対する追加罰金 | 1日あたり5万バーツ |
違反の成立は、画像の有無だけでなく、投稿目的、ブランド名・容器の表示、表現内容、誘引性、報酬・広告関係などを含めて判断されます。改正法施行後の個別案件は、タイの法律専門家または所管当局へ確認してください。
実際の摘発事例(2015年〜2020年)

2015年:アジアティーク内レストランのメニュー掲載違反
バンコクの有名観光スポットアジアティーク(Asiatique The Riverfront)内にあるレストランが、メニューにアルコール飲料の写真を掲載していたことが問題となり、罰金46万バーツを課せられました。違反期間が220日に及んだため、1日あたり5万バーツの追加罰金が積み重なった結果です。
メニューへの掲載という極めて日常的な行為でも、法律の対象になり得ることを示した事例です。
2015年:Beer Changのインフルエンサー騒動
タイの大手ビールブランドBeer Changがステルスマーケティング手法を活用し、有名人やインフルエンサーにビールのロゴ入り画像・動画をSNSに投稿させた事件です。これがタイ国内でアルコール飲料のSNS投稿規制への意識が一気に高まるきっかけとなりました。
2020年6月:クラフトビール愛好家の摘発
2020年6月、クラフトビール愛好家のArtid Sivahansaphan氏がFacebookにクラフトビールのレビュー投稿をしたことで摘発されました。この事件で注目すべきは、氏が一般市民のビール愛好家であり、インフルエンサーや企業担当者ではなかったという点です。
最終的な判決は懲役6ヶ月(執行猶予)+罰金15万バーツでした。「一般人のSNS投稿も対象になるのか」とタイ国内外で大きな議論が巻き起こりました。
2020年6月12日:保健省疾病管理局の公式見解
騒動を受け、タイ保健省疾病管理局(Department of Disease Control)は2020年6月12日に公式見解を発表しました。その内容は「法律が規制するのは商業目的の広告・宣伝行為であり、純粋に個人的な日常投稿は対象外である」というものでした。
ポイント:ただしこの見解はあくまで行政機関の解釈であり、法律そのものの改正ではありません。「商業目的かどうか」の最終判断は当局や裁判所に委ねられるため、完全に安心できるわけではない点に注意が必要です。
2025年法改正と2026年の現行ルール

2025年11月8日施行:酒類管理法(第2号)
酒類管理法(第2号)B.E. 2568(2025年)は2025年9月9日に官報掲載され、90日ではなく官報掲載日の翌日から60日経過後となる2025年11月8日に施行されました。マーケティング・コミュニケーションや間接広告、著名性を利用したブランド訴求などに関する規定が追加・整理されています。
2026年5月29日以降:販売時間は原則11時〜24時
タイ国政府観光庁(TAT)の2026年5月29日付案内では、一般の酒類販売時間は毎日11時〜24時です。旧制度にあった午後の販売制限は、現在の一般ルールではありません。ただし、施設の許可条件、販売禁止場所、仏教祝日や選挙に伴う告示など、個別の制限や例外は残ります。
シーン別OK/NG判定表:この投稿は違法?

2008年法、2025年改正法、タイ保健省疾病管理局(DDC)の解説を踏まえ、投稿時に確認したい要素をシーン別に整理します。
| シーン | 判定 | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 旅行中の食事写真にビールが少し映り込んでいる | グレーゾーン | 画像だけで一律に違法とはされないが、文脈・表現・商業性を含めた確認が必要 |
| ロゴやパッケージが明確に写ったビール写真を個人アカウントに投稿する | リスクあり | 第32条の文言上は違反に該当しうる。摘発事例もある |
| 「このビールは最高!みんな飲んでみて!」のような購買促進的な文章を添える | NG | 飲酒・購入を誘引する表現としてリスクが高い |
| レストランやバーがメニューにアルコール写真を掲載する | NG | 2015年のアジアティーク事例で実際に46万バーツの罰金 |
| インフルエンサーが企業から報酬を受けてアルコール投稿を行う | NG(厳格) | 商業目的が明確なため第32条の核心的な違反に該当する |
| アルコールのブランド名・ロゴをテキストのみで言及する | 要確認 | 表示方法、文脈、誘引性、商業目的を含めて個別判断が必要 |
| クラフトビールに関するレビューをブログ・SNSに書く | リスクあり | Artid氏の事例が示すように、個人のレビューでも摘発リスクがある |
| 空港免税エリア・ホテルバー内でのお酒の写真を投稿する | グレーゾーン | 販売規制の例外エリアだが、SNS投稿規制は場所に関係なく適用されうる |
注意:上記の判定はあくまで現行法と行政見解に基づく目安です。「商業目的かどうか」の最終判断は当局・裁判所に委ねられます。特に外国人が摘発された場合はビザや在留資格にも影響しうるため、迷ったら投稿しないのが最も確実な対策です。
タイでのSNS運用・広告配信、現地ルールが気になる方へ
タイではアルコール関連の発信を含め、SNS投稿や広告配信で注意が必要なケースがあります。DAYZERO BANGKOKでは、公開前に確認すべき点を整理しながら、SNS運用・広告配信・投稿内容の設計を日本語でサポートします。
旅行者・在住者が知っておくべきお酒の基本ルール

販売時間の制限
2026年5月29日以降、タイの一般的な酒類販売時間は11時〜24時です。コンビニやスーパーなどでは、原則として0時〜11時は購入できません。店舗・施設の許可条件によって扱いが異なる場合があるため、現地表示とスタッフの案内に従ってください。
年齢制限
タイで酒類を購入・飲酒できるのは20歳以上です。購入時にパスポートなどの身分証明書を求められることがあります。
仏教祝日・選挙時の販売制限
マカブーチャ(万仏節)、ウィサーカブーチャ(仏誕節)、アサラハブーチャ(三宝節)などの仏教祝日や、選挙に伴う期間は酒類販売が制限される場合があります。対象日・時間と例外はその都度の告示で変わるため、旅行前に最新情報を確認してください。
場所・施設による例外
国際空港、許可を受けた娯楽施設、ホテル、指定観光区域、許可を受けたイベント会場などでは、一般ルールと異なる条件が適用されることがあります。例外は無条件ではなく、施設の許可と告示の範囲に限られます。
注意:販売時間の例外とSNS投稿の広告規制は別の論点です。空港やホテルで撮影した場合でも、ブランド訴求、飲酒の誘引、商業目的、報酬関係などを含めて投稿内容を判断してください。
旅行者・在住者・インフルエンサー別の注意点

旅行者の方へ
タイ旅行中に屋台ビールやカフェでのカクテルを友人にシェアしたくなる気持ちは当然ですが、以下の点に気をつけてください。
| 行動 | リスクレベル |
|---|---|
| 食事写真にビールが映り込む程度 | 現実的なリスクは低い(ただし絶対安全ではない) |
| ロゴやパッケージを強調したアップ写真 | リスクあり |
| 「このビール最高!飲むべし!」のような購買促進キャプション | 明確にNG |
なお、タイへの免税持ち込み上限は1人1リットルです。帰国時のお土産購入時にも注意してください。
駐在員・在住者の方へ
日本語圏のフォロワーを多く持つ在タイ日系ブロガーや駐在員の方は、個人の発信であっても影響力の大きさによって「商業目的」と判断されるリスクがあります。特にアフィリエイトリンクや企業案件が絡む投稿は慎重に取り扱ってください。
SNS発信者・インフルエンサーの方へ
タイに進出している日系の居酒屋や飲食店のSNS担当者、あるいはタイをベースに活動するインフルエンサーの方は特に注意が必要です。アルコール関連の投稿依頼を受ける際は、商業目的であることが明確なため第32条の核心的な違反に直結します。
「タイなので実際の運用は緩い」という側面があることも事実です。しかし、法律に違反するリスクを認識した上で判断することを強くすすめます。特に外国人が摘発された場合はビザや在留資格にも影響しうるため、日本国内でのリスク認識以上に慎重な姿勢が求められます。
ポイント:タイでのインフルエンサーマーケティングの費用相場やジャンル別の選び方については、以下の記事で詳しく解説しています。アルコール以外の商材や、投稿前の確認が必要な商材では、タイ人KOL・インフルエンサー施策の進め方もご相談いただけます。
最新ルールを確認するときの公式情報
タイの酒類規制は、法律本体だけでなく、販売時間、販売禁止日、場所別の例外などを定める告示によって実務が変わります。古い日本語記事やSNS投稿だけで判断せず、施策実施日・旅行日の直前に公式情報を確認してください。
| 確認先 | 確認できる内容 |
|---|---|
| タイ保健省疾病管理局(DDC) | 酒類管理法、改正法、省令・告示 |
| タイ国政府観光庁(TAT) | 旅行者向けの販売・飲酒ルール |
| タイの法律専門家・所管当局 | 広告、インフルエンサー施策、個別投稿の適法性 |
タイの広告規制全般やデジタルマーケティング環境については、以下の記事も参考にしてください。
よくある質問(FAQ)
Q. タイ旅行中にビールの写真をInstagramへ投稿すると違法ですか?
写真があるだけで一律に違法と決まるわけではありません。DDCの解説では、商品名・容器の表示に加え、飲酒を勧める表現や広告性など投稿全体が判断材料になります。報酬を受けた投稿、ブランドを強調する構図、「おすすめ」「飲んでみて」などの表現は特に慎重に確認してください。
Q. 罰金はいくらですか?
2008年法第43条には、違反類型に応じて最大50万バーツの罰金、最大1年の懲役、違反継続時の追加罰金が定められています。2025年改正法施行後の適用条文と実際の処分は行為ごとに異なるため、個別案件は専門家へ確認してください。
Q. タイのビールブランドのロゴを載せるだけでもNGですか?
ロゴや商品パッケージが写っていることだけで自動的に違法になるとは限りません。ただし、称賛・おすすめ表現、購入や飲酒の誘引、商業目的、報酬関係と組み合わさるとリスクが高くなります。
Q. 2025年の法改正で何が変わりましたか?
酒類管理法(第2号)B.E. 2568(2025年)が2025年11月8日に施行されました。マーケティング・コミュニケーション、間接広告、著名性を利用したブランド訴求などに関する規定が追加・整理されています。実務では2008年法、改正法、最新の省令・告示をあわせて確認します。
Q. タイのコンビニでお酒を買えない時間帯はいつですか?
2026年5月29日以降の一般ルールでは、販売可能時間は11時〜24時のため、原則として0時〜11時は購入できません。施設の許可条件、販売禁止場所、特定日の告示によって異なる場合があります。
Q. 仏教祝日や選挙日は買えませんか?
仏教祝日や選挙に伴い、酒類販売が制限される場合があります。ただし対象時間・場所・例外は告示により異なるため、旅行日程に該当する場合はTATや現地当局の最新案内を確認してください。
免責事項:本記事は2026年8月5日時点の公式資料に基づく一般情報です。法律上の助言ではありません。具体的な投稿や施策はタイ保健省疾病管理局の最新法令を確認し、必要に応じてタイの法律専門家へ相談してください。
タイでのSNS運用・マーケティングでお悩みの方へ
DAYZERO BANGKOKは、タイ現地で確認すべき点を整理しながら、SNS運用、広告配信、投稿内容の設計、問い合わせ導線づくりまで日本語でサポートします。日本人担当者が対応いたします。

タイで現地採用としてIT企業での営業・WEBマーケティングを数年担当。WEBマーケティングで得た経験や知識を活かしYouTubeを2017年に立ち上げ、翌年2018年にWeb広告代理店事業を設立。SEO対策、動画制作、SNSマーケティングなど幅広くWebマーケティング事業を展開。現在代表を勤める。