最終更新日:2021年8月2日
本記事では、タイのEC(通販)サイトの市場規模を見ていきます。
ECとは「Electronic Commerce」「E-Commerce」の略で、和訳すると「電子商取引」となります。インターネットを活用して商品やサービスを売買することを意味します。タイ国では、スマートフォンユーザーを持つユーザーが非常に多く、ほとんどのタイ人が何かしらの形でECをつかった経験があります。また、越境ECも盛んである程度良質で安い商品も手軽に買うことができます。
そんなタイのECに日系企業も参入する話を聞くことも増えてきたので、タイのEC市場がどのような現状なのかを紹介していきます。
タイのEC市場規模について
タイデジタル経済社会省の傘下にあるETDA(Electronic Transactions Development Agency) が2020年度に発表した2019年度のデータに基づいた内容をシェアさせていただきます。
なお、2020年度のデータは2021年9月に発表されるということをETDAの担当者よりか確認をしておりますので、最新情報についてはお待ちください。
B2CのEC規模(2017年~2018年)
中国、アメリカ、フランス、日本、韓国および複数のASEAN諸国のデータを比較した図です。(単位はUSD、画像はクリックして拡大できます)
圧倒的にEC事業の規模が大きいのが上図の一番上にある中国(2019年:1,330 Billion USD (約145兆円)となっています。2位がアメリカ(2019年度:約52兆円)、3位が日本(2019年度:約18兆円)となっています。
一方、タイはどうなっているかというと6番目(2019年度:約5兆円規模)となっています。
しかし前年比伸び率は99.61%とタイが圧倒的に伸びています。中国は約45%、アメリカは約6%、日本は約13%です。
規模としては日本よりはまだ小さいですが、よりマーケットが大きくなることは予測できます。少子高齢化が進む日本は人口が減っていき、消費する量が減ることは明らかです。そのため、永続企業を目指すべく長く生き残る企業はすでに海外の伸びていく市場に目を向けて投資しています。
特にタイでのEコマース上の商品は、中国からの越境ECが盛んです。他国はすでにタイを抑えていますので、日本もタイのみならず東南アジアやその他海外に目を向けることは必要かと思います。
カテゴリー別EC市場規模
JETROが出している(タイにおけるオンライン日用品市場(EC)に関する調査)を参照
ある程度規模が見えたと思うので、今度はどの業界(カテゴリー)が売り上げ規模なのかを見てみようと思います。2018年度のデータとなります。このデータからも見えるとおりタイのECで人気がある商品は主に下記3点です。
- ファッション(2019年5月でタイで最もWEBアクセス数が多かったのはNikeのWEBサイト)
- 美容関連(日本や韓国の美容グッズが人気)
- 電化製品(スマホやTV等が人気)
市場の大きなタイのECアパレル業界
タイのアパレルEC市場は、2013年の約21億バーツからコロナ前の2019年には338億バーツへと約16倍もの成長を遂げています。この成長の背景にあるのは、アパレル専門のECサイトの参入やSNS上でのEC機能の充実によるものと推測します。
2016 年には小売大手のセントラルが ZALORA9を買収し LOOKSI10として再スタート。2017 年にはシンガポール系のアパレル ECサイト「ZILINGO」もタイへ進出。タイのアパレ ル EC サイト POMELOに日本のスタートトゥデイ(ZOZOタウン)が100万米ドルを出資したのも 2017年です。
ECを利用するユーザー層
2020年度のEC利用者のデータです。16歳〜64歳までのインターネットを使う男女(サンプル数不明)を対象に、調査時より過去1ヶ月以内にオンラインで何かしら買い物をしたことがあると答えた方が上記のパーセンテージとなります。55歳以上となると他の年齢より多少使用率は落ち込むものの、年齢問わずECを利用することがわかります。
タイ人EC月額利用金額
タイの月間オンライン消費金額(2018年度)
日本の月間オンライン消費金額(2019~2021年度) 参考:総務省統計局
タイの月間消費額は2018年度月額平均は1,480バーツ(約5,000円)です。日本は平均すると14,332円であるので、日本と比較した場合はタイの月間の消費額は約1/3の規模となります。毎月多少の変動はあるもののタイにもクリスマスセールや年末年始プロモーション、またECプラットフォームごとに特別なプロモーションがあるため日本同様年末にかけて消費が伸びる傾向にあります。
尚、2月も11月ほどの消費額がありますが、タイには中華系のタイ人が多いのでチャイニーズニューイヤー(旧正月)があったり、それに合わせたプロモーションもあります。4月のソンクラン(タイのお正月)に向けて旅行の段取りもこの辺りから始める人が多いと思うので、売り上げが上がりやすい時期かと思います。その後は、一旦お財布の紐が固くなり、6月〜7月ごろにあるミッドイヤーセールにて再度消費熱が高まるものと推測します。
タイ国内でEC市場が延びる理由・要因
タイのEC事業が年々ます中で、そもそもなぜ市場が伸びるのか、それらの要因について下記に綴らせていただきます。
ネットユーザーの増加(格安スマホ/ネット普及/ネット高速化)
ECを使うにはまずはインターネットおよびインターネットを使えるデバイスの普及が必要だと思います。2011年時点では18Millionの人しかインターネットを使っていなかったのですが、そこから10年経った2021年度では当時の約3倍の約49Millionの人(タイの全人口は約7,000万人)がインターネットを使う様になりました。インターネットが普及した背景にあるのは、ネットの高速化(3G、4G、LTE)や、中華製の格安スマートフォンが普及されたことも要因としてあるのかと思います。
iPhoneを持つユーザーももちろん一定層いますが、貧富の差が激しいタイではXiaomiをはじめにOPPOやRedmi、Vivoなど機種にもよりますが2、3万円程度から手に入るスマホが誕生したことで今までPCやスマホを持てていなかった層が増えたものと考えます。
SNS×ECの浸透
タイ人は1日24時間あるうち平均8時間44分をインターネットに費やしているとのデータがあります。(1を参照、詳しくはこちらの記事をご確認ください。)特にFacebookやYouTube、Line、Instagramを利用する人は多いです。(2を参照)以上を踏まえた上で、下記のデータをご覧ください。
この資料は、2020年にE-Commerce summitがタイで開催された時に発表されたデータです。タイのECで最も多く使われているのがLazadaやShopeeなどのECプラットフォームではなく、日々使い慣れているFacebookやLINE、Instagramと言ったソーシャルメディア(全体の40%を占める)が最も使われています。(図の左側)各SNSにはECの機能が含まれていたり、FacebookではCtoCの機能もあるため、SNSの利用者もそもそも多いので各SNSでの取引も多いものと思われます。
また、このカンファレンスで発表された内容を下記にまとめます。
- ECで購入するときは99%の人がスマートフォンから購入する
- 77%の買い物客がリサーチを行う
- 56%の買い物客が価格の比較を行う
オンラインで購入する最も人気のある製品は、母親と赤ちゃんの製品。続いて健康と美容製品
電信送金43%、クレジットカードで38%、代金引換で17%の支払いを好む傾向がある
物流環境の充実
タイではEC向けの小口の荷物の物流体制が弱かったのですが、ここ数年で物流環境も整ってきました。東南アジアで拡大を続けるアリババの同グループの物流業者「百世」や、香港の「Kerry」、その他海外の物流会社がタイに参入したことで今まで小口の荷物の物流体制が弱かったタイですが、これら外資を含めた多くの物流企業のか参入によって、当日配達もできる様になっています。筆者はバンコクに住んでいますが非常に便利だと実感しています。
また、コロナの影響による巣篭もり需要の追い風を受けフードデリバリー市場の発達とともに、GrabやLine、Foodpanda等のバイク宅配便も普及し、小口貨物を即日(数十分以内も対応)配達もできる様になりました。
ただし、バンコク市内は渋滞という課題を抱えているためバイク便であれば素早い配送が可能ではあるものの、四輪自動車による配送には多少時間がかかることは今後も続く課題かとは思います。
便利なEC決済方法
JETROが出している(タイにおけるオンライン日用品市場(EC)に関する調査)を参照
最も多い決済方法はクレジットカード/デビットカードで47%、続いてインターネットバンキングが27.2%。タイの銀行アプリはインターネットバンキングの機能がついているのでECのみならず一般店舗でもQRコードを構えてキャッシュレス化が一部進んでいます。
クレカ決済が最も多いですが、タイではクレジットカードの普及があまり進んでおらず、Repotal(下図)によると日本では68.4%ですがタイでは9.8%の保持率と低いのが現状です。タイではクレジットカードよりデビットカードの保有率が59.8%と非常に浸透しています。
タイクレジットカード保有率等のデータ
日本のクレジットカード保有率等のデータ
その他には、タイ王国統一のQRコードPrompt Pay(個人の電話番号や個人ID、銀行口座IDに紐づく)や、 LINE Pay、True Money等の電子マネーの普及、銀行のアプリからのオンラインでの振り込みなどがあるので多くの人々がECを使う障壁がほぼなくなっているのだと思います。
タイで人気な主要ECプラットフォーム
タイではタイ企業のECもありますが、ユーザーが最も使うプラットフォームはアマゾンのような外資のECです。どのプラットフォームが人気なのかを紹介いたします。
2021年1月~3月の期間のデータで、月間アクセス数が多い順に並んでいます。
名前 | 月間アクセス数 | App Store Rank | Play Store Rank | Facebook Followers |
---|---|---|---|---|
Shopee Thailand | 51,246,700 | 1位 | 2位 | 21,146,980 |
Lazada Thailand | 33,240,000 | 2位 | 1位 | 31,139,790 |
Advice | 2,263,300 | n/a | n/a | 522,710 |
Powerbuy | 2,180,000 | n/a | n/a | 1,202,030 |
Central Online | 2,156,700 | 3位 | 3位 | 1,195,180 |
HomePro | 1,986,700 | 5位 | 5位 | 1,326,410 |
JD Central | 1,853,300 | 4位 | 4位 | 453,910 |
JIB | 1,353,300 | 11位 | 10位 | 501,520 |
Banana Store | 1,340,000 | n/a | n/a | 777,180 |
Officemate | 1,093,300 | 12位 | 12位 | 171,800 |
大人気ECプラットフォーム:Shopee
タイでECが盛んになり始めた頃はLazada一強というイメージが強かったのですが、2017年に彗星の如く突如タイに上陸したShopeeは、タイで人気なインフルエンサーや世界亭にも人気なブラックピンクなどを起用し、瞬く間に知名度は高まり、コロナが広がり始めた2020年にはWEB上でのアクセス数はLazadaを抑えトップに躍り出ました。
カテゴリーの幅は広く、BtoC向けの商材であればほとんどの品を取り揃えています。店舗で買い物をするより明らかに商品数も多く、実店舗よりも価格が安かったり、ポイントが溜まったりとで、弊社はShopeeをメインに買い物をすることが多いです。
Shopee(ショッピー)日本進出!
タイ以外にもマレーシア、シンガポール、ベトナム、台湾、ブラジルなどに展開しているショッピーがなんと日本にも進出!日本でものを売るのではなく、越境ECを支援するための体制を整えているようです。担当者と日本語で話を進めることができるらしく、タイ向けの支援もあるようですが、商品は英語表記が自動翻訳されたタイ語になるので多少違和感はあるのでは無いかと思いますが、コスト0で海外に進出できるのは素晴らしいと思います。
ただ、いくら日本で知名度があっても海外では全く無いといったこともありますので、知名度を高めるためにも広告やマーケティングを合わせて行ってかないとただショッピーという超大型モールに誰の目にも止まらずに時間だけが過ぎてしまうということも大いに予想ができます。
弊社では、クリエイティブ制作(動画や写真)、SNSマーケティングも承っておりますので、海外進出する際にぜひ合わせてご利用いただければ幸いです
タイの商戦期
タイのECは、毎月と言って良いほど何かしらの大きなプロモーションを行なっています。よくあるプロモーションとして、7月7日や8月8日、11月11日といったようなゾロ目の日にプロモーションを行います。それ以外にも、年末セールやミッドイヤーセール、サマーセール、チャイニーズニューイヤーセールなど時期に応じたPRもあります。
コロナの影響を受けた2020年度のEC事情
大きく伸びた2020年の売上規模
オンライン決済プラットフォームで人気の「PayPal」のCEOダン・シュルマンは下記の通りに述べています。
同社2021年2月の発表によると、新型コロナウイルスの感染拡大により20年の世界経済が停滞したのとは裏腹に、世界におけるオンライン小売売上高は前年の3兆3500億ドル(365兆1500億円、1ドル=109円換算)から4兆2800億ドル(466兆5200億円)へと急増した。日本円にして100兆円増、これは米国1国分のオンライン小売市場が新たに誕生したことを意味する。世界のオンライン小売売上高は21年には4兆8900億ドル(533兆100億円)まで伸びると試算されている。
(https://toyokeizai.net/articles/-/433816より一部参照)
2020年はタイ国内でもコロナの影響を受けた事業は非常に多くありますが、ロックダウンや外出禁止令等の措置により、巣篭もりする時間が圧倒的に増えました。PaypalのCEOが述べる通りタイ国内でもECの売上は上がっているものと予測します。(ETDAのデータは2021年9月に発行される予定です。その際に更新いたします。)
まとめ
コロナの影響もありEC事業は大きく売り上げが伸びています。一方で、それにより仕事を無くす業界もあります。非常に厳しい社会の流れにはなっていますが、今の事業との掛け合わせで売り上げアップにつながる手助けになることを祈ります。
タイでWEB集客、EC事業の展開等をご検討の場合はぜひ弊社にご相談下さい。
タイで現地採用としてIT企業での営業・WEBマーケティングを数年担当。WEBマーケティングで得た経験や知識を活かしYouTubeを2017年に立ち上げ、翌年2018年にWeb広告代理店事業を設立。SEO対策、動画制作、SNSマーケティングなど幅広くWebマーケティング事業を展開。現在代表を勤める。