この記事でわかること
- タイでドローンを無許可飛行させると行政処分ではなく刑事罰(罰金+懲役)の対象となり、外国人旅行者も例外なく適用される
- 2017年のSNS投稿による290,000バーツ罰金、2025年の日本人旅行者摘発、2025年の中国人観光客への懲役6ヶ月執行猶予など、実際に起きた逮捕・罰金事例の詳細
- 2025年10月の航空法改正・2026年4月のRemote ID完全適用による最新の罰則内容(違反種別ごとの罰金額・懲役期間)
- バンコク・プーケット・チェンマイなどタイ国内のドローン飛行禁止エリアの具体的な条件と禁止場所の一覧
- タイで合法的にドローンを飛ばすためのNBTC登録・CAAT登録(承認まで約15日)・飛行許可取得・保険加入の4ステップの手順
タイでドローンを無許可で飛行・空撮すると、罰金だけでなく懲役刑を含む刑事罰の対象となります。「知らなかった」「旅行者だから大丈夫」という認識は通用しません。本記事では、実際に起きた逮捕・罰金事例から最新の法改正情報、合法的な飛行手順まで、タイでドローンを飛ばすすべての人が知っておくべき情報を徹底的に解説します。
タイのドローン規制は、主にタイ航空法(Air Navigation Act)およびNBTC(国家放送電気通信委員会)規則によって定められています。ドローンは「無人航空機」として航空法の管轄下に置かれており、無許可飛行は行政処分ではなく刑事罰の対象となります。つまり、罰金を払って終わりではなく、場合によっては懲役刑が科される「犯罪」として扱われます。
この規制を執行するのがCAAT(Civil Aviation Authority of Thailand / タイ民間航空局)です。CAAIはドローンの登録受付、飛行許可の発行、違反の摘発を担っており、警察と連携して取り締まりを行っています。
重要なのは、外国人も例外なく同じ規制が適用される点です。タイ旅行中の観光客、短期出張の駐在員、映像制作のためにドローンを持ち込んだクルー、すべての人が同一の法律の下に置かれます。「旅行者だから」「一瞬飛ばすだけだから」という理由は、法的には何の免責にもなりません。
2025年10月の航空法改正により、罰則は大幅に強化されています。旧法と比較して罰金上限額・懲役期間ともに引き上げられており、取り締まりも年々厳しくなっているのが現状です。
事例1|バンコク中心部での未許可撮影で290,000バーツの罰金(2017年)
タイのドローン犯罪として最も広く知られている事例です。2017年8月、A氏はバンコクの中心部でドローン撮影を行い、撮影した画像や動画を自身のFacebook等のSNSに公開しました。その投稿が発覚のきっかけとなり、同年10月にCAAT(タイ民間航空局)から突如連絡が入りました。
摘発された違反内容は以下の5点です。
- ライセンス無し
- 飛行許可無し
- 夜間飛行
- 人々が集まる都市部での飛行
- 90メートル以上の高度での飛行
SNSへの投稿が摘発のきっかけになったという点は、多くの人が見落としがちなリスクです。「その場で捕まらなければいい」という認識は危険であり、後日証拠をもとに呼び出されるケースが実際に存在します。
当時の航空法第24条により「1区あたり4万バーツ以下の罰金」が規定されており、A氏は8つの区にまたがる飛行として各区から最大限の4万バーツが課せられ、40,000バーツ×8区=320,000バーツの計算となりました。最終的には減額されて290,000バーツ(当時レートで約90万円超)の罰金が科されました。また、撮影に同席していた友人もCAAT に呼び出され、2名合計で290,000バーツを支払っています。
複数の区にまたがって飛行した場合、区ごとに罰金が加算される可能性があるという点は、バンコク中心部での撮影を検討している方が特に注意すべきポイントです。
事例2|デモ撮影で逮捕、75,000バーツの罰金(2020年)
2020年8月16日、タイのデモグループ『Free People』がRatchadamnoen Avenueの周辺でデモを行った際、グループのカメラマンがドローン撮影を試みました。ドローンを飛ばした直後、タイ警察がアンチドローン銃を使用してドローンを強制的に降下させました。ドローンがカメラマンの手元に戻った瞬間、その場で逮捕されています。
このケースで特筆すべきは、カメラマンはドローンのライセンス等を正規に保有していたにもかかわらず、飛行許可を取得していなかったという一点のみで逮捕に至ったことです。罰金は当初10,000バーツと言い渡されましたが、飛行場所が王宮に近接していたことから追加ペナルティが発生し、最終的な支払額は75,000バーツとなりました。
タイ警察がアンチドローン銃を実際に使用していることは、「見つからなければいい」という考えが通用しない現実を示しています。また、場所の性質(王宮・政府施設への近接性)によって罰金が大幅に加算されることも、このケースから明らかです。
事例3|アソーク地区で日本人旅行者が摘発、40,000バーツの罰金(2025年)
2025年、バンコクのアソーク地区において日本人旅行者がドローンを無許可で飛行させ、摘発されています。科された罰金は40,000バーツ。観光目的で持ち込んだドローンを「少しだけ飛ばす」つもりで飛行させたところ、タイ警察に発見・摘発されたケースです。
外国人旅行者であっても例外なく取り締まりの対象となることを、この事例は明確に示しています。また、ドローンの登録はタイ国内でのみ可能であり、日本から事前に手続きを完了させることができません。タイに到着してから登録・許可申請を行う必要があるため、「現地に着いてすぐ飛ばせる」という状況にはなりません。
事例4|プーケット・パトンビーチで中国人観光客が逮捕、80,000バーツ+懲役6ヶ月執行猶予(2025年)
2025年、プーケットのパトンビーチにおいて中国人観光客がドローンを無許可で飛行させ、逮捕されました。罰則は罰金80,000バーツ+懲役6ヶ月(執行猶予1年)。
このケースは、タイのドローン規制が「罰金だけで終わる問題」ではないことを示す重要な事例です。懲役刑が言い渡された(執行猶予付きとはいえ)という事実は、観光客であってもタイの刑事司法手続きに巻き込まれうることを意味します。外国人として現地で刑事罰を受けた場合、日本帰国後にも影響が生じる可能性があります。
事例5|チェンマイでRemote ID未対応による摘発、30,000バーツの罰金(2026年)
2026年、チェンマイにおいてRemote IDに対応していないドローンを飛行させていた操縦者が摘発され、30,000バーツの罰金が科されました。
Remote IDとは、飛行中のドローンをリアルタイムで識別するためのシステムで、2026年4月に完全適用が予定されています。未対応のドローンを飛行させることは、それ自体が違反となります。日本から持ち込むドローンがRemote IDに対応しているか事前に確認することが、今後ますます重要になります。
2024年改正・新カテゴリ制度(カテゴリA〜D)の概要
2024年の規制改正により、タイのドローン分類体系はEU EASA(欧州航空安全機関)の基準に準拠したカテゴリA〜D制度へと大幅に刷新されました。
| カテゴリ | 対応クラス | 重量 | 主な要件 |
|---|---|---|---|
| カテゴリA(オープン) | C0 | 250g未満 | 登録不要(一部例外あり)、基本ルールの遵守 |
| カテゴリB(スペシフィック) | C1 | 250g〜900g未満 | NBTC・CAAT登録必須、飛行許可必要 |
| カテゴリC(スペシフィック) | C2 | 900g〜4kg未満 | NBTC・CAAT登録必須、飛行許可必須、保険加入 |
| カテゴリD(セーティファイド) | C3 | 4kg〜25kg | NBTC・CAAT登録必須、ReOCライセンス、保険加入、事前承認 |
なお、「250g未満なら何でも自由に飛ばせる」というわけではありません。カテゴリAであっても飛行禁止エリアでの飛行や夜間飛行など、守らなければならない基本ルールは存在します。
登録義務(NBTC登録・CAAT登録の二段階)
タイでドローンを飛行させるためには、原則として以下の二段階の登録が必要です。
① NBTC(国家放送電気通信委員会)登録
ドローン本体(電波発信機器)としての登録。タイ国内での電波使用許可に相当します。
② CAAT(タイ民間航空局)登録
航空機としてのドローン登録。オンライン申請が可能で、承認までは約15日かかります。登録の有効期間は2年間です。
重要な点として、これらの登録はタイ国内でのみ手続きが可能です。日本から事前に完了させることはできません。タイ到着後に登録・承認を待ってから飛行することが必要であり、「現地に着いてすぐ飛ばしたい」という計画は現実的ではありません。
飛行許可の取得プロセス
登録が完了した後も、多くのエリアでは飛行前に個別の飛行許可を取得する必要があります。許可申請にはOpenSkyアプリ(CAAT提供)の活用が推奨されています。場所・日時・目的を申請し、承認を受けてから飛行することが求められます。
外国人がタイでドローンを飛ばすための条件
外国人がタイで合法的にドローンを飛行させるためには、タイ人と同様の登録・許可手続きを踏む必要があります。商用目的での飛行(映像制作・広告撮影など)の場合は、ReOC(遠隔操縦航空機操縦者証明書)の取得など追加の要件が課されます。
2025年10月の航空法改正により、タイのドローン違反に対する罰則は大幅に強化されました。以下に主要な違反内容と罰則をまとめます。
| 違反内容 | 罰金 | 懲役 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 無登録での飛行 | 4万バーツ以下 | 1年以下 | または両方 |
| 飛行禁止エリアでの飛行 | 10万バーツ以下 | 2年以下 | 2026年引き上げ、または両方 |
| 空港周辺9km圏内の無許可飛行 | 20万バーツ以下 | 5年以下 | 2026年引き上げ、または両方 |
| プライバシー侵害(盗撮等) | 10万バーツ以下 | 3年以下 | または両方 |
| 保険未加入での飛行 | 5万バーツ以下 | 1年以下 | 2026年引き上げ、または両方 |
| 飲酒・薬物影響下での飛行 | 5万バーツ以下 | 1年以下 | 2026年新設 |
| 事故報告義務違反 | 3万バーツ以下 | — | 2026年新設 |
| NBTC許可なしのドローン輸入 | 10万バーツ以下 | 5年以下 | または両方 |
| Remote ID未対応での飛行 | 3万バーツ以下 | — | 2026年4月以降完全適用 |
2026年に新設・強化された項目として注目すべきは、飲酒・薬物影響下での飛行と事故報告義務違反です。これらは従来の規制には存在しなかった項目であり、タイのドローン管理が一段と厳格化していることを示しています。
また、NBTC許可なしのドローン輸入も重大な違反となります。日本からドローンを持ち込む際には、税関での申告と合わせてNBTCの規定を確認する必要があります。
以下のエリアでは、原則としてドローンの飛行が禁止または厳しく制限されています。
- 空港周辺9km圏内(ドンムアン空港、スワンナプーム空港、プーケット空港、チェンマイ空港など)
- 王宮・政府施設・軍施設の周辺
- 国立公園・自然保護区内(一部は完全禁止)
- 寺院・文化財周辺
- 人が密集するイベント・デモ・集会周辺
- バンコク市内の指定管理区域
バンコクのような大都市では、複数の禁止区域が重なり合っているエリアが多く存在します。「街中で飛ばせるだろう」という感覚的な判断は非常に危険です。飛行前にOpenSkyアプリで当該エリアの飛行可否を必ず確認してください。
2020年のデモ撮影事例で示されたように、王宮近郊での飛行は通常の違反よりも重い追加ペナルティが発生する可能性があります。
ステップ1|NBTC登録
ドローンが電波発信機器としてNBTCに登録されているか確認・申請します。タイ国内で購入したドローンであれば販売店が対応していることもありますが、日本から持ち込む場合は特に確認が必要です。
ステップ2|CAAT登録(オンライン申請・承認まで約15日)
CAAIの公式サイトまたは指定窓口でドローンを航空機として登録します。オンライン申請が可能ですが、承認までに約15日かかるため、渡航前に余裕を持って計画することが必須です。登録有効期間は2年間です。
ステップ3|飛行許可申請(OpenSkyアプリの活用)
OpenSkyはCAAT提供の公式スマートフォンアプリで、飛行場所・日時・目的を申請し、許可を受けることができます。地図上で飛行禁止区域も確認できるため、事前調査にも役立ちます。申請から承認まで時間がかかる場合があるため、撮影予定日の十分前に申請することをおすすめします。
ステップ4|保険加入
2026年の法改正により、保険未加入での飛行に対する罰則が強化されています。ドローン飛行前に適切な賠償責任保険に加入することが義務となっています。
ステップ5|当日のタイ警察・関係機関への連絡
特に人が多い場所や施設付近での撮影を行う場合、事前にタイ警察や施設管理者への連絡・確認を行うことでトラブルを防ぐことができます。2020年のデモ撮影事例のように、ライセンスや許可を持っていても状況によっては問題になるケースがあるため、コミュニケーションによる事前確認は重要です。
日本からのドローン持ち込み時の税関申告
ドローンを日本からタイに持ち込む際は、タイの税関でのきちんとした申告が必要です。NBTC許可なしのドローン輸入は、罰金10万バーツ以下・懲役5年以下という非常に重い罰則が定められています。「個人使用の荷物」として申告せずに持ち込むことは、それ自体が重大な違反となる可能性があります。
Remote ID対応の確認(2026年4月完全適用)
Remote ID(飛行中のドローンをリアルタイムで識別するシステム)は2026年4月に完全適用される予定です。日本から持ち込むドローンがRemote IDに対応しているかどうかを、渡航前に必ずメーカーのスペック情報で確認してください。未対応のドローンは2026年4月以降、タイでは合法的に飛行させることができなくなります。
商用利用の場合の追加要件(ReOCライセンス等)
映像制作・広告撮影・不動産写真など、商業目的でドローンを使用する場合は、個人の趣味・旅行での飛行とは異なる追加要件が課されます。ReOC(遠隔操縦航空機操縦者証明書)の取得が必要となる場合があり、取得には一定の訓練・試験が求められます。タイで商用ドローン撮影を行う場合は、現地の専門業者に依頼することが最もリスクの少ない選択肢です。
登録はタイ国内でのみ可能
繰り返しになりますが、NBTC登録・CAAT登録はいずれもタイ国内でのみ手続きが可能です。日本にいる間に事前完了させることはできません。渡航後、登録と承認(CAAT承認は約15日)を経てから初めて合法的な飛行が可能になります。「タイに着いたらすぐ飛ばす」ことは不可能であることを事前に理解した上でスケジュールを組んでください。
Q:250g未満のドローンなら登録不要で自由に飛ばせますか?
A:カテゴリA(C0クラス:250g未満)は基本的に登録不要ですが、「自由に飛ばせる」わけではありません。飛行禁止エリア・夜間飛行・人口密集地での飛行などのルールは250g未満のドローンにも適用されます。エリアによっては飛行許可が必要になるケースもあるため、飛行前にOpenSkyアプリで確認することをおすすめします。
Q:観光客でもタイでドローンを飛ばせますか?
A:観光客であっても、タイに入国してからNBTC登録・CAAT登録を行い、必要な許可を取得すれば合法的に飛行できます。ただし、CAAT登録の承認まで約15日かかるため、短期旅行中に飛ばすことは現実的に難しい場合がほとんどです。旅行中にドローン空撮を希望する場合は、タイ国内の正規のドローン撮影業者に依頼することをおすすめします。
Q:タイで罰金を払った場合、日本に帰国後も前科として残りますか?
A:タイの司法手続きで有罪(罰金刑・懲役刑)となった場合、タイ国内での刑事記録が残ります。日本の刑事記録とは別のものですが、タイへの再入国審査や一部の国際的な身元調査に影響を与える可能性があります。特に懲役刑が言い渡されたケースでは、より深刻な影響が生じうるため注意が必要です。
Q:ドローン保険はどこで加入できますか?
A:タイ国内では、大手損害保険会社やドローン販売店を通じてドローン賠償責任保険に加入することができます。日本の保険会社が提供する海外旅行保険の中にドローン使用をカバーするものがある場合もありますが、補償範囲を事前に確認することが重要です。タイ国内の正規業者を通じて飛行する場合、業者側が保険を保有していることが一般的です。
Q:SNSに投稿した過去のドローン映像が問題になることはありますか?
A:実際にあります。2017年の事例では、飛行から約2ヶ月後にSNSへの投稿がCAAT に発見され摘発されています。過去に撮影した映像の公開を検討している方は、撮影時の状況(許可の有無、飛行エリアなど)を十分に確認した上で判断することをおすすめします。
本記事で紹介した事例をまとめると、タイでのドローン違反がいかに深刻なリスクをはらんでいるかが明確になります。
- 2017年:SNSへの投稿が発覚のきっかけとなり、290,000バーツの罰金
- 2020年:ライセンス保有者でも飛行許可なしで逮捕、75,000バーツの罰金
- 2025年:日本人旅行者が摘発、40,000バーツの罰金
- 2025年:中国人観光客が逮捕、80,000バーツ+懲役6ヶ月執行猶予
- 2026年:Remote ID未対応で摘発、30,000バーツの罰金
2025年10月の航空法改正、2026年4月のRemote ID完全適用により、タイのドローン規制は今後さらに厳格化されていく方向にあります。タイのドローン市場自体は2025年に2.6 Million USDの収益規模が見込まれ、2026年には6.2%の成長が予測されている一方で、規制の厳格化も同時進行しているのが現状です。
「大丈夫だろう」という楽観的な判断は、重大な刑事罰につながります。タイでドローンを飛行させるすべての人に必要なのは、NBTC登録・CAAT登録・飛行許可取得・保険加入という4つのステップを確実に踏む「事前準備」です。
タイでのドローン映像制作(動画・写真)については、ぜひ弊社にお問い合わせください。弊社はCAAT登録・飛行許可取得・保険加入など、すべての法的手続きを適切に完了した状態でドローン撮影を提供しています。映像制作チームをバンコクに持ち、タイ全土77県どこへでも出張して撮影することが可能です。ドローン空撮のみならず会社紹介動画等の動画撮影も承っておりますので、映像に関することは何なりとお申し付けください。

タイで現地採用としてIT企業での営業・WEBマーケティングを数年担当。WEBマーケティングで得た経験や知識を活かしYouTubeを2017年に立ち上げ、翌年2018年にWeb広告代理店事業を設立。SEO対策、動画制作、SNSマーケティングなど幅広くWebマーケティング事業を展開。現在代表を勤める。
